季節の歩み 第7回 【観点A,B,Cから5段階評定への集約の工夫〜「Aに近いB」を区別する】
 観点別評価を,それぞれの根拠となる点数を合計した数値に基づいて5段階の評定を行うと,観点別評価A,B,Cと5段階評定との関係が見えにくくなるという問題があります。反対に,A,B,Cをポイント化したものを合計して5段階の評定を行うと,5段階評定は単なる観点の分布を表す記号となり,観点別評価と別に表記する意味が薄れます。加えて評価の根拠となるデータを多項目にするほど評定が1,3,5に集約し,2,4が極端に少なくなるという現象が生じます。今回,Bのうち「Aに近い優れたB」を取り出し,(同様にBに近いCも設ける)ポイントを5段階にポイント化(C=0,Bに近いC=1,B=2,Aに近いB=3,A=4)したものの合計値によって,1〜5の評定を行う方法を試みました。その具体例を示します。併せて『杉システム』お試し版から,更新された見本データの部分だけを取り出して利用する方法についても,この機会に詳細に説明します。=2006.12.16=
《目次》
1.見本データを最新版に置きかえる
2.「Aに近いB」方式による評定のサンプルを見る
3.計算式の定義と編集

  
1.見本データを最新版に置きかえる
(1) 見本データ最新版だけをサイトから入手する
見本データ最新版の入手法  ホームページにある,『杉』お試し版のダウンロードによって,最新の見本データが同時にダウンロードできます。今回取り上げている評価法のサンプルが追加されたのは,2006年12月12日以降の見本データからです。ハードディスク内の見本データがそれより古いものだった場合は,以下説明する手順に従って更新する必要があります。なお,今回説明するサンプルは,4ページ目の「2学期評定・理科」です。

※ この表は計算式に『杉システム』バージョン2.01.29以後の機能が使用されていますので,それ以前のバージョンのままになっている場合は,システムも更新していただく必要があります。

以下,右の図を使って解説します。

@ ホームページの図の部分(『杉』お試し版のダウンロード)で『杉システム』最新版,見本データの一方または両方をダウンロードできます。

A ダウンロード用ページの指示にしたがって,お使いのコンピュータのどこかにダウンロードしてください。

B ダウンロード先には,図のアイコンがついたファイルがダウンロードされています。このアイコンをダブルクリックして,起動させてください。
C ハードディスク上の見本データだけを置きかえる場合は,図のように見本データの展開だけにチェックを入れてください。
※ 『杉システム』バージョン2.01.29より古い場合は,『杉』システム本体にもチェックを入れ,さらに更新(最新版で上書き)を選択してください。

D その後,実行ボタンを左クリックします。

E 見本データの展開にチェックを入れた場合,このダイアログボックスが表示されます。ハードディスク上のデータ用フォルダ(\sugid\)の見本データダウンロード用に割り振られたフォルダの中身を最新版に更新すべく,確認を求めます。通常は実行選択します。

F 新しい見本データは,現在入っている見本データを上書きします。上書きしても支障がない場合はOKを選択肢します。
 
(2) 「Aに近いB」方式のサンプルを見本データから選択
「評定2学期・理科」の選択 説明用サンプルデータは,見本データ最新版の4ページに,評定2学期・理科の名前で入っています。ディスクなど外部の媒体が差し込まれていない状態で『杉』システムを開始します。すると,ハードディスクに入っている見本データなどの一覧が表示されます。

@ ハードディスクに入っている見本データなどの一覧です。『杉』システムのお試し版を最初にダウンロードしたとき,通常は一番右下に見本データ受信箱と名づけられた位置が最新版ダウンロード用に設定されます。ここを左クリックすると,ダウンロードした見本データ集が開きます。

A 『杉』システムのデータは表にまとめられていて,最大100個の表が5つのページに入るようになっています。「Aに近いB」方式のサンプルは4ページ目評定2学期・理科の名称で入っています。4ページ以外のページが表示されている場合は,ページ表示欄を左クリックすると4ページに変わります。評定2学期・理科を左クリックによって選択します。

B 選択した表についてどのような操作をするかを選ぶために,道具箱に一覧が表示されます。今回のテーマは計算式の実行に関係するので,通常計算を選択しますが,評価の作業は並べ替えを頻繁に行うので,並べ替えを選択し,その中で計算式を実行することにします。
 
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2.「Aに近いB」方式による評定のサンプルを見る
並べ替え画面における計算の操作(1) 並べ替え画面で計算式を見る
 「Aに近いB」方式のサンプルには,一部の生徒について計算結果が書き込まれていますが,計算の実行がすぐ実感できるように,空白部分を残してあります。まず,スクロールして表全体を見ていただくとよいと思います。

C 計算式の編集・実行機能は強力並べ替え画面に入っているので,強力を左クリックによって選択します。

D 強力並べ替え画面に変わりました。計算を左クリックによって選択します。

E 並べ替え画面内の計算式編集・実行モードになりました。現在の計算式が表示されていて,編集・実行ができます。
 式実行…計算式を,すべて順番に実行します。一部の計算式だけを選んで実行したい場合は,[実行位置][終了位置]ボタンを指定位置までドラッグ(ボタン表示上でマウス左ボタンを押下し,そのまま指を離さずに計算式まで移動し,指定位置でマウスボタンから指を離す)します。または,計算式の上で右クリックし,ポップアップメニューの実行位置で指定します。実行範囲は,計算式の番号を白色表示して示されます。
 中止…強力並べ替え画面に戻りますが,計算式編集・実行モードで行った計算式の編集は取り消されます。
 計算終…並べ替え画面における計算式編集・実行機能を終了し,強力並べ替え画面に戻ります。

F 印字を左クリックすると,現在の計算式全体の印刷イメージを表示し,印刷を実行することができます。
 

(2) 計算式について
 計算は全生徒について一斉に行い,ある列(と他の列)の値から計算した結果を目的とする列に書き込みます。列A,列B,…に関数Fを作用させて求めた値を列Xに書き込むときの計算式の書式は,

 列X=関数F(列A,列B,…)

です。列A,列Bの部分に定数が置かれる場合もあります。例えば,1学期中間テストの国語,社会,数学,理科,英語の合計得点を5科計の欄に書き込む数式は,

 1学期中間.5科計=合計(1学期中間.国,社,数,理,英)

です。
 式の編集方法は2通りあります。ひとつは計算式表示欄の周囲のボタンや項目名を左ボタンドラッグで引っ張ってくる方法です。もうひとつは,計算式表示欄を右クリックし,ポップアップメニューから要素を選択する方法です。なお,新しい式や項目名を挿入したい場合は,挿入/置換ボタンを左クリックすることによって切り替えます。
 
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3.計算式の定義と編集
(1) サンプルに搭載された「Aに近いB」方式による計算式
計算式一覧 右図は,印刷ボタンによって表示された印刷イメージです。計算式を逐次説明します。
  1.  提出物等.関の欄に実験や提出物から得た「自然事象への関心・意欲・態度」についての得点を集計します。関数総和は,対象の列を単純に合計しますが,関数合計と異なり未記入の欄を値0として加算します。(「合計」は,対象の列に一つでもや空白があると,計算を中止し,合計の欄にはや空白が書き込まれます)
     自由研究.関は,記録した得点を2倍して合計します。"全反射.関…フック.関"は指定された範囲の列のうち小項目名に".関"をもつ列だけを抜き出して合計するという意味です。
  2.  提出物等.思の欄に「科学的な思考」についての得点を集計します。
  3.  提出物等.実の欄に「観察・実験の技能・表現」についての得点を集計します。
  4.  2学期合計.関心の欄に提出物等,定期テストVの「自然事象への関心・意欲・態度」についての得点を集計します。このサンプルでは,定期テストWは特に関心態度を評価する出題がされてないので,合計しませんが,このサンプルを将来応用するときに備え,形式的に重み0として項目を上げてあります。
  5.  2学期合計.思考のへの集計です。
  6.  2学期合計.実験のへの集計です。
  7.  2学期合計.知識のへの集計です。計算式4〜7は,それぞれ提出物等,2回の定期テストにそれぞれ適当な重みをつけ,合計が大体100点になるように調整してあります。
  8.  2学期合計.関心の値を,閾(しきい)値によってポイント化します。この式の場合,2学期合計.関心30点未満→030点以上45点未満→145点以上58点未満→258点以上70点未満→370点以上→4のようにポイントに換算され,2観点ポイント.関に書き込まれます。
  9.  2学期合計.思考の値を,ポイント化します。
  10.  2学期合計.実験の値を,ポイント化します。
  11.  2学期合計.知識の値を,ポイント化します。計算式8〜11で得られたポイントは,それぞれ:普通のC,:Bに近いC,:普通のB,:Aに近いB,:Aを表現します。
  12. 各観点をポイント化した値の合計し,2学期評定.得点に書き込みます。
  13.  2観点ポイント.関2学期観点.関に直します。A,B,Cは内部値としてそれぞれ2,1,0を持つので,階級関数で0〜1→,2〜3→,4→の変換を行えばABCのいずれかが得られます。
  14.  2観点ポイント.思からABCを得ます。
  15.  2観点ポイント.実からABCを得ます。
  16.  2観点ポイント.知からABCを得ます。
  17. 2学期評定.得点から5段階評定を得ます。この計算式では,例えば各観点がAAABの場合は4+4+4+2=14,または4+4+4+3=15ポイントとなり,何れもです。また,AABBの場合4+4+2+2=12,4+4+3+2=13,4+4+3+3=14ポイントの3通りがあり得ます。この計算式では14ポイント以上がですから,が2つとも「Aに近いB」Bである場合のみ,それ以外はになります。もし,の条件を15ポイントに下げると,AAABでも,Aに近いBならになります。
 従って,この方法を使えば,同じAABBになったりになったりすることで,Bの質をある程度表現することができます。計算式17で数値を変えたり,計算式8〜11で「Aに近いB」の閾値を変更したりして式実行し,計算終整列▼で並べ替えて分布をみると,いろいろ興味深い結果が生じるので試してみてください。
 
(2) 計算式の編集
計算式一覧 ここでは,右ボタンによる操作の一部(対象項目の範囲や,重みを変更する操作)に限って説明します。詳しくは,右ボタンで表示するポップアップメニューの最下部にある解説をクリックし,参照してください。本サイトのこれまで,「〜評価評定 達人を目指す〜」などシリーズの随所で説明しています。よろしければ参考にしてください。

@ 対象項目,または対象範囲の左端の項目を変更または挿入する。(変更/挿入は挿入/置換ボタンで切り替える)計算式の変更または挿入したい位置で右クリック→ポップアップメニュー上で項目を選ぶまでマウスカーソルを移動→表のすべての項目名(列の名前)が表示されるので,そのどれかを左クリック。(右クリックや[Enter]キーでもよい)

A 「…対象」の範囲を指定。で表現される範囲では,範囲左端の小項目名と同じ小項目名をもつ列を自動的に抜き出して計算の対象にする。@で指定した項目の上で右クリック→ポップアップメニュー上で…選択範囲までマウスカーソルを移動→表のすべての項目名(列の名前)が表示されるので,そのどれかを左クリック

B 重みを変更する。「×数値」の位置で右クリック→ポップアップメニュー上で数値を設定までマウスカーソルを移動→「×重み」を選択(左クリックなど)→数値入力ボックスが開くので,重みとする数値を変更→[Enter]キー押下。

C 階級関数の閾(しきい)値を変更する。階級関数の書式は,

 ポイント記入先=階級(対象列,閾値1,閾値2,…)

です。対象列の値<閾値1のときポイント,対象列の値≧閾値1のときポイント,対象列の値≧閾値2のときポイント,…がポイント記入先に書き込まれます。
 閾値の修正は,修正したい閾値の上で右クリック→(ポップアップメニュー)数値を設定→=定数で,開いた入力BOX内の数値を変更します。数値は,数字キーを直接打つか,↑↓キーで増減させます。最後に[Enter]キーです。
 
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